ピアノとバイオリンのための小品「道程」
Duo for Piano and Violin "The Road"
楽曲について
ピアノとヴァイオリンのための小品「道程(みちのり)」。副題は「〜とある思い出の為に〜」。原曲は2006年頃に書いたもので、2023年頃に全面的に書き直して完成させました。ハ長調、複合二部形式、演奏時間は約10分。
タイトルの「道程」は、高村光太郎の詩とは関係がありません。読みも「みちのり」です。互いに複雑な家庭の事情を抱えていた二人の、人生の道程という意味で付けました。
楽曲構成
曲はハ短調の序奏から始まります。ヴァイオリンはしばらく沈黙したままで、ピアノだけが pp から長いクレッシェンドをかけて歩き出します。
序奏がハ長調に解決したところで第一主題が現れ、続いて同じくハ長調の第二主題。ここまでで複合二部形式の前半が形づくられます。苦悩と癒しは、ピアノとヴァイオリンのどちらにも現れます。
中ほどに Maestoso 四分音符=54 の場所があります。全曲で最も遅く、最も重い。人生のどん底、一番暗いトンネルの真ん中にあたります。
そこを抜けて、Allegro con brio 四分音符=112。コーダの最終展開で、調はヘ長調に移ります。傷を互いに舐め合いながら苦難を越えた先に、ようやく掴んだ幸せです。
終結部で、冒頭の動機と調号に戻ります。テンポも、始まりと同じ四分音符=72。苦くも暖かい過去を抱えたまま、頂点で得た幸せとともに、未来へ歩き出していく——そういう終わり方を書きました。
この曲は、速度の指示が七回変わります。72、86、60、54、86、112、92、そして最後にまた72。小品としては多いほうで、ピアノとヴァイオリンがそれぞれ別の時間を歩く箇所もあります。
演奏について
公開している音源は、ヴァイオリン=山田聖華、ピアノ=木村彩乃のお二人による演奏です。この収録では、私自身が指揮をしています。デュオの録音に指揮者が立つのは通常ありません。私のテンポに関する注文があまりに細かかったため、奏者の側から「振って」と求められた結果でした。
原曲から十七年を置いて、借用和音を含む新しい語彙で書き直したことについて、意味が変わったというよりは説得力が増したという感覚があります。それは完全に財産だと思っています。
ヴァイオリン:山田聖華 ピアノ:木村彩乃